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Research Topic
研究テーマ
1
都市化とグローバル化
(パンデミックが照らし出す都市化と移動)
人間と感染症の歴史を振り返ってみると、大きな感染症の流行には、都市化と グローバル化という二つの要因が密接に関連していることが分かります。とはいえ、感染症に強い社会を作るために、都市とグローバル化を放棄する ことは現実的な選択肢とは言えません。それらによって、私たちの生活が便利に なっていることも否定し難い事実だからです。
そこで、私たちは、まず、過去と現在における都市と感染症の関係、人間の移動とパンデミックの関係を検討することにより、改めて、人間の生活の あり方と感染症の関係を整理していきます。
続けて、2020年以降の新型コロナウイルス感染症のパンデミックを世界各地の人びとがどのように経験してきたのかに焦点を当てながら、都市的な 生活のメリットを維持しながらパンデミックを乗り切るために人びとが編み 出してきた知恵を収集し、感染対策と都市的な生活のバランスを取る可能性を 検討していきます。
2
脱人間中心主義の政治
(パンデミックにおける人間と非人間:生政治と脱人間中心主義の視点から)
私たちの生活は、人間だけでなく、さまざまな生物や非生物が相互に影響し あいながら成り立っています。新型コロナウイルスによって私たちの日常が 大きく変化したことが、そのことを物語っています。
パンデミックについて考えるとき、私たちは人間の動きに目を向けがちですが、 実際には数多くの生物や非生物が関係しあいながらパンデミックという現実を 作っていました。
そして、パンデミックが起こって人間の生活が変わることによって、ウイルスや 人間以外の生物・非生物の状態も大きく変化しました。さらに言えば、新型コロナウイルス感染症以外の感染症においても、人間とその他の生物や非生物が 複雑に絡まりあっていると言えます。
それでは、具体的にどのようなことが起こってきたのでしょうか?
この班では、パンデミックが改めて明るみに出した人間と非人間の関係を再考していきます。
3
集団化と比較
集団化と比較 (COVID-19による集団変容と歴史的継承の比較研究)
COVID-19への人間の対応に歴史性を見出すことができるのかということを 探求し、過去の事象を対象とする歴史学と現代の事象を対象とする人類学(文化人類学、医療人類学)による学際的な共同研究を行います。
広域アジアの複数の地域(日本、中国、韓国、南アジア、中央アジア)をフィールドとし、過去と現在を研究対象とする二つの学問領域が融合することで、現代社会における歴史的継承性を検討することできると考えています。
注目しているのは、COVID-19への対策によって生じる社会経済の変化のなかで、従来の人間集団がどのように変容しつつあるのか、そこに過去の人間の営みが歴史的にどのように継承されているのかという点です。
そのために、過去の感染症流行とその抑制過程について、COVID-19と比較し うる事例を探し出すことと、現代のCOVID-19の蔓延およびその抑制方法を受容(あるいは拒絶)する人間の行動と集団の変容過程に関して、文化的および地域的な多様性とその理由を明らかにすることを目指しています。
4
格差とケア
(COVID-19流行下の世界における格差とケアの学際研究)
感染症流行の影響は、心身の健康の損失にとどまらず、社会的なつながりの 喪失、経済的な困窮、差別と暴力など多岐にわたります。しかもこれらの問題は、すべての人を等しく脅かすのではありません。感染症が流行する時はいつも、貧困層、心身の障害や精神疾患を抱えた者、女性や性的マイノリティといった人々が、過剰な苦しみを負わされてきました。そこで私たちは、文化人類学、公衆衛生学、経済学、歴史学、倫理学の五分野にまたがる知識と方法とを 持ち寄り、パンデミックの負の効果が世界の様々な場所でどのように生み出され、どういった人たちの生活を脅かしているのかを究明します。
またそのうえで、深刻な影響を被った人々が日常生活を回復し、維持するために必要なケアの環境について考えます。私たちの考えるケアの環境とは、感染制御の技術や医療福祉ケアへのアクセスに加えて、パンデミックの負の効果を緩和するための幅広い実践と、それを支える多様な知識と技術、人々の連帯など、私たちの生活世界を支える資源や結びつきのすべてを意味します。