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2024年7月12日
第4回領域総会(2024年7月27日(土)~28日(日))の開催について
2024年7月27日(土)~28日(日)13:30から立命館大学大阪いばらきキャンパスにおいて、領域総会を実施します。この総会では、班長による研究発表、全ての班員への共有、議論によって研究を深めることを目指します。
2024年5月22日
第4回ウェビナー「「感染症の人間学」をめぐる一考察:フレデリック・ケックの思考を機縁として」の開催について
日時:2024年6月22日(土)13:00~14:30
発表者:小林 徹さん(龍谷大学)
タイトル:「感染症の人間学」をめぐる一考察:フレデリック・ケックの思考を機縁として
<概要>
フレデリック・ケック(Frédéric Keck)は、現代人類学において感染症に対する措置を主題として扱っている論者の一人である。彼は、香港を中心とするアジア圏をフィールドに設定することにより、新興感染症に対する「防止(prevention)」や「予防(precaution)」の問題を「備え(preparation)」の観点から問い直し、国家的介入(司牧的テクニック)と動物との同一化(狩猟的テクニック)の間に、今日の社会における感染症との取り組み方を考え直すための手がかりを提供している。本発表では、『病を運ぶ鳥〔Avian Reservoirs: Virus Hunters and Birdwatchers in Chinese Sentinel Posts〕』(2020)に示されている彼の思考を機縁として、私たちが想い描いている(想い描くべき?)「感染症の人間学」について、哲学研究者の視点から考察することにしたい。
内容としては、以下のとおり、二〇世紀後半以降の思想史の流れの中にケックを位置づけた上で『Avian Reservoirs』の内容を読解し、そこから見えてくる今日的な人間学の在り方について考察する予定である。
1)垂直性と水平性:現象学の転回と二つの構造主義
2)現代人類学とフレデリック・ケック:構造人類学の継承について
3)感染症と人類学:動物のレベルで見ること(『Avian Reservoirs』前半の読解)
4)司牧的統治と備えの倫理:「前哨(sentinel)」「模擬(simulation)」「備蓄(stockpiling)」(『Avian Reservoirs』後半の読解)
5)まとめ:人間学と想像力
参加をご希望の方は6月20日24時までに以下のフォームからご登録ください。
アクセス用のリンクは前日までにメールでお知らせいたします。
主催:科研費(学術変革領域研究B)「感染症の人間学:COVID-19が照らし出す人間と世界の過去・現在・未来」(代表:浜田明範、課題番号:23H03792)
本ウェビナーに関するお問い合わせ先:澤野
*Zoomのみのオンライン開催で、録画の配信は行いません。
2024年2月7日
第3回ウェビナー「中国のCOVID-19対策をめぐって」の開催について
開催日時:2024年2月21日(水)19:00~20:30
場所:オンライン(ウェビナー)
発表者:飯島 渉さん(青山学院大学)
タイトル:中国のCOVID-19対策をめぐって
<概要>
COVID-19のパンデミックの「起承転結」において、中国の位置づけはたいへん大きい。それは次のような理由による。
新型コロナウイルスの起源が中国の湖北省武漢市とされること。自然発生説が有力だが、依然として武漢の研究所からの流出説がたびたび主張されている。中国政府はWHOとの共同調査も実施したが不十分であり、ウイルスの起源をめぐって議論が続いている。
中国が選択したロックダウン(中国語の表現は「封城」)は、ウイルスの封じ込めを目的とする住民の行動の徹底した制限であった(飯島渉2020)。日本が選択した「自粛」を基調とする対策とは大きな違いがある。新型コロナ対策において中国と日本の対策はきわめて対照的であった(Wataru Iijima 2021)。
中国はデジタル技術を駆使して住民の行動を管理した。それは世界の近未来的な状況を示すものでもある。他方、中国が選択した対策を支えたのは「社区」という疑似コミュニティであった。共産党組織が埋め込まれた「社区」を基盤として戦時体制に近い物資や人員の動員が行われた。中国のCOVID-19対策は、「旧くて新しい」対策であった。その意味では、「社区」(居住単位)を「デジタル隣組」とみることができる(飯島渉2023b)。
中国は一貫してゼロコロナ対策を維持した。2021年になると、国際的には特異な空間が出現した。世界ではCOVID-19が蔓延していたが、中国では外国からの感染を除けば、感染は抑制された。中国政府(共産党)が、ゼロコロナ対策(中国方式)の優位性(正当性)を主張した所以である。
2022年になると中国でもオミクロン株の感染が拡大したが、中国政府(共産党)はゼロコロナ対策を継続した。その背景には、北京等での冬季五輪の開催と秋に中国共産党大会を開催することが予定されていたことがあった。また、中国製ワクチンの有効性が必ずしも高くなかったため、ゼロコロナを維持したとみることもできる。2022年後半に行われた北京市のロックダウンでは、全住民を対象として72時間に1回のPCR検査が義務付けられた。こうした対策は、経済的ダメージも大きく、巨額の財政支出を必要とする高コスト(人的な動員も含む)な対策であった。
ゼロコロナ対策の継続への住民の不満が高まり、中国政府(共産党)は、2022年末、突如としてウイズコロナに対策を転換した。劇的転換はまさにハードランディングで、多くの人々が感染した。かなりの死者もあったとみられるが、その実態は明らかではない(飯島渉2023a)。
2020年以来のCOVID-19のパンデミック、その「起承転結」は、中国から始まり、中国がウイズコロナに対策を転換したことによって「結」を迎えた。実際には、COVID-19の流行自体が終息したわけではないので、「終わりの始まり」と見るべきである。こうした中で、新興感染症の出現に備えるという意味でも、また、中国研究においても、中国における対策の実情を明らかにする(歴史化する)段階を迎えている。しかし、対策の有効性(正当性)に踏み込まざるを得ず、フィールドワークを含め、障害が大きい。
セミナーでは、中国のロックダウンにおいて重要な役割を果たした「社区」に注目し、新型コロナ対策史の世界的な文脈の中に、中国の事例を位置づけることを試みたい。
<文献>
飯島渉(2020)「「疫病史観」による中国の一〇〇年と新型肺炎」『中央公論』2020年6月号
飯島渉(2023a)「中国、ウィズコロナへの転換―ゼロコロナとは何だったか」『世界』2023年2月号
飯島渉(2023b)「中国武漢市のロックダウンと「社区」―COVID—19対策におけるコミュニティの問題」『社会経済史学』89₋2、2023年8月
飯島渉(2024)『感染症の歴史学』岩波新書、2024年1月、特に、第1章「新型コロナのパンデミックー二一世紀の新興感染症」
Wataru Iijima (2021). Jishuku as a Japanese way for anti-COVID-19: Some Basic Reflections, Historical Social Research Supplement 33.
主催:科研費(学術変革領域研究B)「感染症の人間学:COVID-19が照らし出す人間と世界の過去・現在・未来」(代表:浜田明範、課題番号:23H03792)
本ウェビナーに関するお問い合わせ先:澤野
2024年1月17日