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第1回ウェビナー(2023年12月23日)の開催について

2023年10月16日

本プロジェクトチームのメンバーが登壇する連続ウェビナーを開催します。学際的に知識を補完し合い、また議論によって研究を深めることを目的としています。


日時:2023年12月23日(土)14:00~15:30

発表者:高橋絵里香さん(千葉大学)

タイトル:パンデミックの天候‐世界:コロナ禍のフィンランドにおける大気=雰囲気の醸成と森への退却


<要旨>

新型コロナウイルス感染症は、エアロゾル感染という概念を一般化した。感染を避けるためには、ひんぱんな換気や不織布マスクの着用が有効であるとされたことで、人々は今までになく空気の状態に注意を払うようになった。フレデリック・ケックは、欧米における感染症対策を、国家による予防の発想と生政治に基づく管理-統制の営みとして理解している。だが、そもそも空気に予防的態度をとることは可能なのだろうか?ティム・インゴルドによれば空気は物質ではない。彼の提唱する「天候‐世界」という概念に基づくならば、空気は堅固な物性を備えた相互作用の対象ではなく、相互作用の条件である。だとすれば、感染症対策において空気は客体化し得ない対象であることになる。パンデミックは本当に空気を客体化し操作の対象に含むこむランドスケープを新たに生じさせたのだろうか?

それとも、我々は天候‐世界の中に投げ込まれたのだろうか?

本発表は、コロナ禍のフィンランドにおける感染症への集合的な反応を記述する。北欧型福祉国家は、司牧的権力の極致ともいえる大きな政府による統治によって知られてきた。それは第二次世界大戦後の都市化・産業化が急速に進展する過程において建設されていったものであり、都市的なライフスタイルを前提としていると考えられてきた。だが、パンデミックによって明らかになったのは、フィンランドの感染症対策の「外気」や「森」に対する開放性である。健康な外気を吸い込むための場所として、都市の外部には常に森があり、人々は森への退却の可能性を常に想像してきた。そこで、本発表はコロナ禍において浮き彫りになった国家による統制と放置、都市とその外部との間の社会保障的な線引きについて、大気=雰囲気(アトモスフィア)というキーワードから考察していく。


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